クラシック音楽入門

〜友人M.Tに寄す〜

●第一回「クラシック音楽のおおまかな流れ」

改定履歴:
Ver4.2(1999/ 1/15改訂[ドヴォルザーク、ヤナーチェクの発音リンクを追加])
Ver4.1(1998/12/7改訂[メンデルスゾーン追補][ヤナーチェク追加])

ほんとにおおまかにサクーッと飛ばしてクラシック音楽の流れを書いてみます。
読み流してみてください。

●クラシック音楽以前
一口にクラシック音楽といっても300年以上にわたる歴史があります。
「西洋音楽」と言われるものは、中世に宗教音楽として発展したグレゴリオ聖歌あたりから形をととのえ始めます。
しかし、グレゴリオ聖歌は五線紙に書かれていないんですよ。6本だか7本だか線が引いてあるところにおたまじゃくしではなく、丸や菱形が書かれているものなんです。
グレゴリオ聖歌は、最近ヒーリング・ミュージックとして脚光を浴びたりしてますよね〜。伴奏なし、アカペラで小人数が厳かに宗教的な内容を歌うものです。

●バロック音楽
ですから一般に「クラシック」といわれるのはその次の時代、バロック音楽の時代からです。この辺で五線紙も確立し、有名な「四季」がヴィヴァルディ(伊 1678〜1741)によって書かれ、巨人バッハ(独 1685〜1750)が登場します。バッハは「音楽の父」という呼び名があります。質・量ともにその名にふさわしい偉人です。
また、テレマン(独 1681〜1767)は、とってもバロックらしい典雅な曲を沢山書いています。ヘンデル(独 1685〜1758)は"ハレルヤ・コーラス"で有名ですね。
イタリアの二人のマルチェロ、アレッサンドロ・マルチェ(1684〜1747)、ベネディット・マルチェ(?〜?)も、バロック好きにはたまりません。

●古典派
次にくるのが、古典派時代です。この言葉は全然的をえていないし、好きではないのですが。
ここで有名なのはハイドンモーツァルトです。
ハイドン(墺 1732〜1809)は「交響曲の父」と言われ、交響曲を100曲以上書いた人です。
モーツァルト(墺 1756〜91)は、この時代の天才で、熱狂的なファンが大勢います。映画「アマデウス」で彼の生涯を知っている人も多いでしょう。

●ロマン派
次がロマン派の時代。ベートーヴェン(独 1770〜1827)は古典派からロマン派への両方に跨った人。「第九」や「運命」などはきっとどなたも一度は聴いたことがあるはず。
そしてロマン派の時代には、
シューベルト(墺 1797〜1827)・・・交響曲「未完成」が有名だが、「ます」「魔王」など歌曲が主体。
ベルリオーズ(仏 1803〜69)・・・非常におおがかりなオーケストラを使う「幻想交響曲」で有名。
メンデルスゾーン(独 1809〜47)・・・「真夏の夜の夢」、交響曲「スコットランド」など。
シューマン(独 1810〜56)・・・とにかくロマンチック!4曲の交響曲、3曲の弦楽四重奏曲など。
ショパン(ポーランド 1810〜49)・・・繊細華麗なピアノ曲の数々。
ワーグナー(独 1813〜83)・・・オペラの極致として総合芸術「楽劇」というジャンルを作り出した。
ブラームス(独 1833〜97)・・・4曲の交響曲、2曲の弦楽六重奏曲など。時代的にはここだけど作風は「ロマン派」ではなく独自のもの。
などの巨匠たちがいます。

●イタリア歌劇
イタリアは伝統的にオペラの国です。ここに至るまでも華やかなオペラ文化を育んで来たわけですが、この時代には特筆すべき二人の巨人がいます。
ヴェルディ(1813〜1901)の作品はアイーダ、オテロ、椿姫、トロバトーレ、リゴレット・・綺羅星のような名曲ばかりです!
プッチーニ(1858〜1924)の作品では日本を題材にした蝶々夫人が有名です(サクラサクラの旋律が使われていたりします)。しかしその他のトゥーランドット、ラ・ボエームなどもとってもロマンチックで素晴しいです。

●国民楽派
ここまで読んでくると、有名作曲家がほとんどイタリア・オーストリア・ドイツばっかりって感じですよね〜。しかし、ようやく次の時代あたりから、色んな国の特色ある音楽が花開き出します。国民楽派と呼ばれる時代です。
スメタナ(チェコ 1824〜84)・・・組曲「わが祖国」の「モルダウ」が有名
ヨハン・シュトラウス二世(墺 1825〜99)・・・ウィンナー・ワルツの帝王。
ドヴォルザーク(チェコ(ボヘミア) 1841〜1904)・・・「チェロ協奏曲」「新世界」などが有名。名前の発音をここで聞けます。
ヤナーチェク(チェコ 1854〜1928)・・・金管好きにはたまらない「シンフォニエッタ」があるかと思えば、室内楽も独特の味(「弦楽四重奏曲第一番・第二番」など)。名前の発音をここで聞けます。

北欧でも素晴しい音楽が生まれます。
ノルウェーにはグリーグ(1843〜1907)が登場、「ペール・ギュント」や「ピアノ協奏曲」などを残しています。
デンマークではニールセン(1865〜1931)が代表とされます。
フィンランドでは、独立を突き動かした国民的な曲「フィンランディア」を書いたシベリウス(1865〜1957)が光ります。彼の真骨頂は7曲残した交響曲のうち、5番・7番にあります。あと有名なのは1番と2番。

●ロシア
その中でもロシアは素晴しい独自の発展を見せました。
チャイコフスキー(1840〜93)は白鳥の湖などのバレエ曲、有名な「悲愴」を含む6曲の交響曲などを遺しました。美しい旋律と、ある種の野暮ったさ(泥臭さ)が特徴、かと(^-^;)。
リムスキー=コルサコフ(1844〜1908)は千夜一夜物語を題材にしたシェエラザードなど。オーケストラ使いの名手で色彩豊かな曲を作る人、という評価が一般的です。
ボロディン(1833〜87)は「韃靼人(ダッタンじん)の踊り」で土俗的なパワー横溢の舞曲をおくりだし、交響的絵画「中央アジアの草原にて」では広大な大地を詩的に描きだしました。
ムソルグスキー(1839〜81)は「展覧会の絵」「禿山の一夜」で、
グリンカ(1804〜57)は躍動感溢れる「ルスランとリュドミラ」序曲、で有名です。
ロシアは、ここに一大黄金時代を築くわけです。大体クラシック・ファンを分類すると、「ドイツ物」ファン、「フランス物」ファン、「ロシア物」ファンが多いようです。
そのくらい大きな勢力を占めた、わけです。
「イギリス物」、「アメリカ物」とはあまり言いません・・・私は好きですが(^-^;)

●重厚長大なドイツ・オーストリア
さて一方ドイツ・オーストリアではブルックナーマーラーリヒャルト・シュトラウスが活躍。後期ロマン派と呼ばれる時代です。いずれも重厚にして長大な曲を書いています。
ブルックナー(墺 1824〜96)は本当に長〜い交響曲を書いた人で、なかなかとっつきづらい人です。しかし一度はまった人は抜け出られなくなります・・・。
マーラー(墺 1860〜1911)は1000人で演奏する交響曲など大作を多く書きました。色んな旋律が精神分裂症ではないかと思うくらいに次から次へと惜しげもなく登場するのが特徴です。
R・シュトラウス(独 1864〜1949)は、映画「2001年宇宙の旅」で使われて一般にも有名な「ツァラトゥストラはかく語りき」を書いた人です。この人は文学が好きだったらしく、ニーチェから想を得た「ツァラトゥストラ」のほかにも「ドン・キホーテ」や、ドイツ民話をもとにした「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」などを書いています。


●フランスの隆盛
フランスにはフォーレ(1845〜1924)が現れ、名曲「レクイエム」や沢山の室内楽曲で一世を風靡。サン=サーンスなどを経て次に黄金時代が到来します。
その先鞭を切ったのがドビュッシー(仏 1862〜1918)(ピアノ曲「月の光」が有名)で、絵画の影響を強く受け、印象主義という作風を確立します。「海」という名作は葛飾北斎の有名な「富嶽三十六景神奈川沖」を観て(パリ万博で「ジャポン」がエキゾチック・センセーションを巻き起こしていた頃です。)書かれたものです。この人こそ印象主義の権化というべき人であり、旋律の後ろに薄いベールのような雰囲気を醸し出す独特の業師です。
サティ(仏 1866〜1925)はジャン・コクトーと仲が良かった人で、大変な変人であったようです。「ジムノぺディ」などの美しいピアノ曲を沢山残しています。
また、ラヴェル(仏 1875〜1937)は「亡き王女の為のパヴァーヌ」「ボレロ」「ラ・ヴァルス」などの名作を生みます。

●近代
19世紀から20世紀へ・・・近代です。
ラフマニノフ(露 1873〜1943)・・・ロマンチックなピアノ曲が有名。テレビドラマなどにもよく使われます
バルトーク(ハンガリー 1881〜1945)・・・打楽器重視が目立つ独自の技法。
ストラヴィンスキー(露 1882〜1971)・・・「火の鳥」が有名。
プロコフィエフ(露 1891〜1953)・・・「ピーターと狼」が有名だが、難しい曲を一杯書いてます。

ラフマニノフは置いといて、その下に書いた3人になると、徐々に「和音」や「調性」が 薄れて行って初心者の方には聴きづらいような曲が増えていきます・・。このあとに登場する現代音楽を既に準備している3人です。

●現代音楽
オーストリアにシェーンベルク(1874〜1951)が現れます。彼は後期ロマン派から出発し、無調音楽(調性がない音楽)を経て十二音音楽というところにまで到達します。いわゆる「現代音楽」の幕を開いた人です。
アメリカではジャズとクラシックの融合を考えたガーシュウィン(米 1898〜1937)が「ラプソディ・イン・ブルー」という名作を書きます。あと有名な人はコープランドとバーバーでしょうか。
日本では故・武満徹(1930〜96)。世界的に認められた日本人作曲家は彼一人です。
イギリスにはブリテン(1913〜76)が現れます。ロシアにはショスタコーヴィチ(露 1906〜75)、ブラジルにはヴィラ=ロボス(1887〜1959)・・・・・。

以上がクラシックの流れなのです。如何?一口にクラシックと言っても、そうい うわけで全然違うんです。例えば「四季」とショスタコーヴィチを聴いたら、 「おいおい、これをおんなじジャンルの棚においといていいんかい!?」と言い たくなりますよ(^-^;)。

●まずは聴いてみよう!
というわけで、クラシックを聴いてみよう、と思い立ったら、上に書いた時代 から一つづつ聴いてみるとよいでしょう。
例えば、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、ワーグナー、 ドヴォルザーク、ラヴェル、ドビュッシー、チャイコフスキー、シベリウスを各1枚とりあえず聴いてみるのです。そうしてみて、「私はこの時代がいいな」とか「この作曲家が気に入った」というのが少なくとも必ず一つはあると思います。そうしたら、その「お気に入り」の作曲家なり時代から何枚か買ってみて聴きこんでみるのです。そうしてるうちに、段々興味の対象が広がってきて、じわじわと違う作曲家や時代が聴きたくなってくるものです(^-^)<第一回了>

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