ルルーとともに
1999/2/1 紀尾井ホール(東京)
- ●スペシャルコンサート!
- 紀尾井ホール、私は初めてでした。天井が高くて、よいホールです。初台のオペラシティーに似た造り。同じ建築家の方かな?
- 普段モルゴーア定期を行っている津田ホールも勿論よいホールなのですが、普段と違ったホールに、「まさしくスペシャルコンサート!」と感じて、開演前から胸は高鳴ります。
- 今回はオーボイストのH.M.(1)さん、H.M.(2)さんと連れ立って出かけました。彼らの目当ては勿論、フランソワ・"世界のオーボイスト"・ルルーです。しかし私はその横で「終わった時、この二人もモルゴーアファンになってるはず・・」とほくそえんでいたのでした。
- ●フランセが絶品!
- まずはブリテン作曲「幻想曲 作品2」(Ob,Vn,Va,Vc)。ルルーのCDにも収録されている曲です。すみません、緊張しきっていたせいかよく覚えておりません・・・f(^^;)。荒井さんがノッてるな〜、というのが唯一残っている印象です。
- 次のフランセ作曲「弦楽三重奏曲」(Vn,Va,Vc)が絶品でした!!フランセ、私はよく知らなかったのですが現代フランスの作曲家です(御健在)。ちょっとブリテンの「シンプル・シンフォニー」を思わせるようなお洒落な曲。
- 第一楽章 Allegretto vivo は、全奏者弱音器をつけてひそやかに・・
- 第二楽章 Scherzo;Vivo は、おどけた舞曲風のとっても楽しい曲。こういうのをやる時、モルゴーアの魅力が最大限に感じられます!
- 第三楽章 Andante は、バーバーのアダージョを思わせるような曲。哀切な曲調に、モルゴーアの暖かな音色が相俟って、切なくなります・・。
- 第四楽章 Rondo;Vivo は、たのし〜〜い終楽章。
- 最初っから最後まで惹きつけられっぱなしの素敵な曲・演奏でした〜。
- ●ルルー無伴奏独奏
- 続いてはルルーが一人で舞台に現れ、十八番「ソロオーボエの為の"5つの絵"」を無伴奏独奏しました。シルヴェストリーニというオーボエ奏者が1980年に19才で(!)作曲したこの曲、「オーボエのパガニーニ」とでも言いたくなるような難曲です。私はスペシャルコンサート前に予習ということでルルーの別コンサートも聴いたのですが、そちらではアンコール曲としてこの曲集から一曲吹いていました。もう唖然呆然・・・でした。今回この曲集を全て聴ける!・・これも楽しみにしていたことでした。
- ・ ・ ・ ・ ・
- またもや言葉なし・・。
- 一人で吹いているとは信じ難い奏法をいとも簡単に吹きまくり、音域外高音でさえ完璧な音形・音程、指の動きは目にも止まらぬ早業、頬から首にかけては異常に膨れ上がり、循環呼吸によって何分間も息継ぎ無しで細かい音符の羅列を吹きまくる・・。
- いやはや人間業とは思えません。
- この曲後すぐ休憩。ロビーでは興奮とため息が渦巻いていました。
- 同行のH.M.(1)さんは「上海雑技団のようだ・・」と呟いています。別口で行っていた友人に遭ったら「大道芸人みたい・・」と言っています(^-^;)。ルルーの「芸」の見事さ・テクニカルな素晴しさを表しているのでしょう。と、同時に「テクニカル満点のものには芸術点満点をつけ難い・・」という(アイススケートなどでもありますよね)芸術特有の難しさも垣間見た気がしました。
- ルルーという人間、は「もう、とっても素敵!」というしかありません(^-^;)。
- 天才なのに礼儀正しい好青年。それでいて茶目っ気たっぷりです。シルヴェストリーニのあと、鳴り止まない拍手に何度も何度も出てきて応えるルルーが、最後は苦笑しながら楽譜を楽器で指して「俺じゃないよ、シルヴェストリーニの楽譜がすごいのさ」といった表情をしてみせたのには会場がわきました(^-^)。
- 休憩時間も楽屋の方から何だか途轍もないパッセージを吹きまくっているのが聞こえてきたりして・・音楽が大好きな天真爛漫な天才、といった印象でした。
- ●ゆったりと歌い上げるモーツァルト
- 後半一曲目はモーツァルト作曲「フルート四重奏曲 ハ長調」(Fl,Vn,Va,Vc)。
- 登場したヤンヌ・トムセンさん、とっても美人・・・(*^_^*)。ってのは置いといて・・美しい音色と確かなテクニックを持った方でした。
- モルゴーアの三人は主役のフルートを伴奏する形で支えたかと思えば、歌うところはしっかり歌って対等な形も覗かせます。荒井さんの美しいメロディー、藤森さんの暖かい低音が光りました。
- ゆったりとしたテンポ・完璧なテクニックで歌い上げるモーツァルト、そんな印象の演奏でした。
- 続いてモーツァルト作曲「オーボエ四重奏曲 へ長調」(Ob,Vn,Va,Vc)。
- 第一楽章 Allegro ちょっとパッセージにハシッテいるところがあったかなぁ・・
- 第二楽章 Adagio 一転してゆったりと歌い上げました。今回のモーツァルトのキーワードかしらん。
- 第三楽章 Rondo;Allegro 荒井さんが良かった!荒井さんは色々な音色を持ってらっしゃる方だとかねがね思っていましたが、ここでは「典雅なモーツァルト・モード」で聴かせてくれました〜(^-^)。
- ●ジュスマイヤーは曲が・・・
- 最後はジュスマイヤー作曲「五重奏曲 ニ長調」(Fl,Ob,Vn,Va,Vc)。
- ジュスマイヤーは、モーツァルトの未完の「レクイエム」を補筆完成させたことで知られる弟子です。彼の補筆は「へたくそ」「台無し」と非難轟々ですよね。今回の曲も正直つまりませんでした・・。今回のメンバー総出での華やかなラスト!ということでは楽しめたのですが如何せん曲がつまらなすぎる・・・。
- 原曲ではフラウト・トラヴェルソが指定されているFlが主役の曲と感じました。ルルー、そしてモルゴーアはちょっとサポートにまわっているような感。3楽章などは個人技で楽しめましたが。
- 私は実際に演奏した期間が短いので演奏自体についてはよくわからないのですが、終演後会った弦楽器奏者は「つまらない曲だったけど、難易度はすごく高かった。どうやって弾いているのかわからないくらい」と言っていました。
- ●楽しかったアンコール
- さあ、モルゴーアと言えばアンコール(笑)。
- 一曲目は、ショスタコーヴィチ(やっぱりやらずば済まぬ^^;)作曲のピアノ曲「24のプレリュードとフーガ 第15番 変ニ長調」です。荒井さんの編曲でしょう。
- そして二曲目は、オーストリアのプレイエルという作曲家(知らん・・・)の五重奏曲より第三楽章「グラツィオーソ」。これぞアンサンブル!!って感じのとっても楽しい演奏でした。メインはジュスマイヤーじゃなくてこっちを全曲やってくれたら良かったのに・・・などと私は個人的に思いました。
- 以上で今回のモルゴーア・スペシャル・コンサートは全て終了。モルゴーアにしてはアンコール2曲ってのは少ないかな(笑)。それにモルゴーアにしては今回のアンコールは上品過ぎたかな?って感じがしました(^-^;)。普段が下品だって言ってるわけじゃないんですよ。普段はアンコールだというのに熱〜〜〜い演奏を聴かせて下さる彼ら。今回は普通の演奏会のように「クールダウン」って感じに思ったわけです。やっぱり気心しれた四人でやるレギュラーコンサートと同じノリで、ってわけにはいきませんよね。
- 何度も何度も拍手で呼び出す我々に応えてカーテンコールに登場して下さった5人。最後はみんな楽器を持ち替えての登場です(^-^)。誰が何を持っていたか、ちょっと覚えていないのが残念ですが、ルルーが弦楽器を持ってたり、モルゴーアのメンバーがオーボエを持って舞台に立ってたりするのは面白かった。和やかに幕、とあいなりました。
- ●全体を振りかえって
- 今回、目立ったのは、荒井さんがノッてること!楽しくて仕方ないって感じです。いつでも音楽を楽しんでらっしゃることが伝わる荒井さんですが、今回は特に、です。一曲目のブリテンから二曲目のフランセへ・・・既にその辺から全開バリバリで、「先発完投できるのかな?」って心配になったほどでした。しかし、そのテンションのまま最後まで弾ききりました。すご〜い。
- 小野さん・藤森さんは普段より大人しめだったかなぁ、って個人的には思います。お二人のゴリゴリ弾きは、やっぱり青木さんが帰ってきてからのお楽しみ、かな。こういったスペシャルコンサートではやっぱり遠慮もあるでしょう。
- そして、もう一点感じた事。「やっぱり、『オーケストラも室内楽もソロも全部やるっ!』っていうのは正解!」って事。今回の5人のうち、ヤンヌさんはソリストとしての活動が主なようですが、ルルーにしろモルゴーアの皆さんにしろ、ソリストだけでも充分やっていけそうなのに、あくまでオーケストラにこだわってらっしゃる、その素晴らしさを感じました!とてもよく相手を聞き、合わせ、時に主張し・・・ソリストの寄せ集めだったら「俺が俺が」となってしまう危険性もあるわけで・・・素晴らしかった今回のコンサート、そんなことは微塵もなかった。素晴しい「アンサンブル」を聴けたなぁ・・・という余韻だけが残りました。
- 一緒に行った二人のオーボイストもすっかりモルゴーアに魅せられてくれたようです。「今度は四人の演奏も聴いてみたいなぁ」という嬉しい言葉がありました(^-^)。
- 終演後は、ファンを大事にして下さるモルゴーア恒例サイン会!今回はゲストのお二人も登場して下さって大満足。私も沢山サイン貰っちゃいました〜(^-^)。
<了>
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