荒井英治 無伴奏 第二夜
1998/5/22 ヴォーリズホール(東京)
- 会場。小さなホールなので顔見知りの人ばかりでした。
- 小野先生も来ていらっしゃいました。
- 私が座った席は前から3列目の真ん中よりいくつか左にずれたところ。私と荒井先生の間には運良く女の子がいただけで先生の演奏姿は何にも邪魔されずにこの目で見ながら演奏を聴くことができました。ラッキー!
- ●いきなり曲目変更!
- 今回は大幅なプログラム変更がありました。
- M.バトラーのブルーグラス・ヴァリエーションを演奏する予定でしたが練習をしているうちにつまらなくなってしまったので止めたそうです。荒井先生、当初はバトラーを面白い作曲家ではないかと思ってたのに、志半ばで挫折。
- その代わりに演奏されたのが、K.シュトックハウゼン(1928〜)作曲のティーアクライス<<12星座>>(1975)より水瓶座、うお座、牡羊座、かに座、さそり座、山羊座、でした。一番最初に演奏されました。
- この曲はもともとミュージック・ボックス(オルゴール)のために作られた曲で、もちろん今回演奏されなかったほかの6つの星座も作曲されています。(ヘビ使い座はないらしい。)
- 一般的なゴムでできたミュートのほかに金属のようなものでできたミュート(大きさは普通のと同じくらいの小さなもの)も使っていました。
- どれも、オルゴールのための曲なので同じメロディーを何回かニュアンスを変えて演奏するという、(荒井先生にとっては)演奏しやすい曲。
- なぜなら、こう弾かなくてはいけないというものがないからだそうです。
- オルゴールのように回っているかんじを出せたらいいなと思って弾いたのだそうですが、心地よい睡眠に多くの人が誘われていました。
- 荒井先生ももう一度出直すそうです。(~_~;)
- 現代曲ですが、とてもきれいな親しみやすいメロディーでした。
- 私は水瓶座なので、特に気に入りました。(~o~)
- ●そしてバッハ
- 二曲目はバッハのパルティータ第一番ロ短調。
- アレマンダ〜ドゥーブル
- コレンテ〜ドゥーブル
- サラバンダ〜ドゥーブル
- テンポ・ディ・ボレア〜ドゥーブル です。
- どの楽章にもドゥーブルという変奏がついているので30分くらいの長い曲。
- 間違えて二楽章の終わりで拍手した人が何人かいました。(^_^;)
- いつもの通り、三楽章あたりでやっと調子が出てきたように見受けられました。
- 手が暖まってきたのね、荒井先生。
- ●Interlude
- 休憩では、またドリンクが振る舞われました。
- 私は欲張りにも紅茶とオレンジジュースを両手に持って飲んでいました。(^_^;)
- コーヒーと烏龍茶っぽいのもあった。
- ●荒井先生のトーク
- 今回はいつもにまして、荒井先生のトークが長かった。(~_~;)先生にとったら、本当に知ってる人ばっかりだから、(全然顔も知らないようなお客さんにとったらびっくりでしょうね。)まぁ、苦労話みたいなこともしちゃってもいいかな、なんて言っちゃって。
- もう、今回の無伴奏、楽しくって楽しくって。だそうでした。
- そもそも無伴奏をやろうと思ったのは、普段、オーケストラや室内楽や、ソロでもコンチェルトとかピアノ伴奏とのデュオだったりして、余りにも今まで、お客さんの耳をすべて自分のヴァイオリンが出す音に集中させるということについて怠りすぎてきたと感じたから。
- 後10年経ってしまったらとてもとても私なんか・・・となってしまうだろうから、もうそろそろ若いという歳でもなくなってきたし、かといって大ベテランでもないいまだからこそやらなければならない、そんな思いの無伴奏です。
- 助けてくれる人がいない。当たり前のことだけど、いつもは一緒に演奏している側の仲間の顔を見て頑張ろう、とか思うのだけど、一人っきりだと間が持たなくて、もう出てきたらすぐに弾かなくちゃ、って焦ってしまうのだそうだ。
- 第一夜のときに、私は先生がまだお客さんが静かになる前に演奏し始めることについて疑問に感じていたのだけど、こういうわけだったのね。案外荒井先生も天才のくせに凡人ぽいところもあるのね。
- で、実際やってみると、いかにお客さんの耳を引き付けるかということよりも、いかに今まで自分の出す音をごまかさずにやってきたか、ということが問われることに気がついたのだそうな。
- ようは自分の中の問題なのです。
- だから・・・・今日は楽しくって!(^!^)
- (相変わらず、わけわかんない間と分けわかんない落ちでした。)
- ●後半はフランセの曲から
- 後半一曲目はフランセ。
- フランセは荒井先生の好きな作曲家の一人でもあるのですが、なぜかというと、偉大な名作を残さなかった。でも、どれをとってみてもオシャレでいい曲だから、だそうです。
- フランセは管楽器のアンサンブルなどでは時々取り上げられるけれど、これからはもっと日本にフランセ・ブームが起こるといいな、とおっしゃっていました。
- 今回演奏された「主題と8つの変奏」(1981)は唯一残されたヴァイオリンの独奏曲です。
- それを知って、是非弾きたいと思った荒井先生。でも、フランセの曲ということでごたぶんにもれず、聴いていると楽しいけれど、演奏している側はものすごく技術も
要求されるし、大変な曲だそうです。
- 聴いていた私はもちろんとても楽しみました。でも、弾いてみることはきっとこれからもないでしょう。
- すごい曲だった。
- フランセはヴァイオリン弾きではなかったのも原因のひとつでしょうね。やっぱり、ヴァイオリン弾きの書いた曲とそうでない人が書いた曲は弾いていて何となく分かるものだと先生も言っていました。
- ●ヴァイオリニスト・ヴィニヤフスキ
- そういう点では次に演奏したヴィニヤフスキの「新しい技術」より「サルタレルラのように」「ソティエ」「カデンツァ」「放浪者の唄」はヴァイオリン弾きにとってのとても良い練習曲だそうです。
- ヴァイオリン用の基礎練習曲はカイザーとかクロイツェルとかいろいろあるけれど、どれも技術を身につけることだけを目的にしていて、弾いていて面白くない。曲として弾いても楽しめる練習曲を誰か作らないかな、と日頃から思っているのだそうですが、その点で、ヴィニヤフスキなんかは、いくつもヴァイオリンの曲を残しているけれど、曲としても楽しいものが多いのだそうだ。
- というわけで、ヴィニヤフスキ。
- ヴィニヤフスキらしい派手な曲です。私は二曲目の「ソティエ」が気に入りました。
- ●ミルシテインでの超絶技巧
- そして、最後にミルシテインのパガニニアーナ。
- パガニーニのカプリス24番をテーマにしていろいろ変奏する曲。荒井先生が言うには、きっとミルシテインは遊んでいるうちにできちゃった曲なのではないか?とのこと。
- これまた派手な、超絶技巧丸出しの曲でした。
- 荒井先生がこれでもか!と気合いを入れまくる系の曲。荒井先生らしい弾きっぷりでした。
- 後半はどれも派手な曲ばかりだったので、先生はノリノリ、お客さんは寝る暇もなく先生の凄い技に釘付けでした。
- ●お楽しみのアンコール
- お楽しみのアンコール、もちろんありましたよー。
- ロカテルリ作曲のカプリスより、ラビリンス。
- その名の通り、不思議なかんじの曲だと先生が演奏前に言ったのでどんなものかと思ったら、私のイメージしていた幻想的な不思議さではなく、どこまでもグルグル回っているような、洗脳される曲でした。
- 先生が、指のまたが裂けるといっていたけれど、まさにそのとおり。1の指と4の指で、3rd.と5,6th.の音を弾いたりしていました。ミルシテインもそういう曲だった。1st.と4th.を同時に押さえてたりして。手がでかくないと絶対に弾けません、あれは。
- ●さあ、次の演奏会は
- 次の荒井先生の本番といえば6月のモルゴーア。定期演奏会も11回を迎えます。
- 今回は中プロにシュニトケを選曲。チェロの藤森さんは、シュニトケは寿命が縮まるといっているそうです。(本番藤森さんがどんなになっちゃうのか、今から楽しみ!!)皆さんもぜひ、聴きに行きましょうね。
- 無伴奏の第三夜は、モルゴーアのシュニトケでどれくらい寿命が縮まったかで決めさせてもらいます、といっていました。
- (とかなんとか言っちゃって、しばらく逃げるのかなぁ?)
- でも、一生の中にはちゃんと第六夜までやるつもりみたい。どうぞご安心を。
<了>
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