第11回定演を聴いて
1998/6/19 津田ホール(東京)
- ●4人の演奏会とは暫しお別れ・・
- 待ちに待った第11回定演。会場はきっちり満員であった。
- この演奏会のあと2nd Vnの青木さんがヨーロッパ留学されるということで、モルゴーアの定演は1年半のお休みということになる。その間も楽しみなスペシャルコンサートがある!ということだが、レギュラーなコンサートは暫しのお別れ。耳を皿のようにして(?)聴きいった。
- ●2nd Vnとは・・・
- まずはハイドン。今回はイ長調 作品55-1。素晴しい演奏だった。
- 今回が青木さんの壮行演奏会ということもあってだろうか、2nd Vnの活躍が目立つ曲である。2楽章のAdagio Cantabileでは青木さんがリードを執っていた。3楽章Menuetも青木さんリードで、1st Vnの荒井さんはオブリガートにまわっている。心憎い選曲だ。
- 4人が4人とも一流の弾き手だからこそ出来る曲でもある。
- さて今回、この曲をモルゴーアで聴くことが出来て、改めて青木さんの音色に惚れ直してしまった。1st Vnの繊細な美しさ、Vaの優しく包み込むような音色、Vcの厚く深い音色、に囲まれて、はっきりと自己表現しづらい・・・そんな感のある2nd Vn。弦楽四重奏団における2nd Vnの役割が過小評価されがちな所以であろうか。
- しかし、今日の青木さんの音色ははっきりと個性を持っていた。
- 「優しく美しく深い音色」という個性である。つまり他の3楽器を全て足したかのような音色・・・。
- それは勿論、青木さんが「2ndを弾いている」と意識しているからなのだろう。コンサートマスターとしてステージに立つ時はまた違った音色なのだと思う。しかしとにかく今回の演奏会では「モルゴーアの2nd Vn青木高志」の音色!というものを再確認できたことが、私にとって収穫であった。
- ●シュニトケ、または不安の音楽
- シュニトケ・・・、不協和音も和音の一種である、ことがよくわかる演奏だった。下手な近現代音楽の演奏を聴くとその「不協和音」のすごさにうんざりしてしまうものだが。
- 前半の怒涛のように押し寄せる洪水のような不安、後半の粘りつく泥濘のような不安、の音楽。そんな中でもモルゴーアは縦の線を一切ゆるがせにしないのだ!音の切り際の統一、アインザッツのすばらしさ、次の音に入った瞬間にはもうビシッときまっている音程・・・、それだけで実に感動的な演奏だった。
- また、私の大好きな「モルゴーアのゴリゴリ弾き」も楽しめた(特に藤森さん)。
- ただ・・・、敢えて「裸の王様」の少年になって言わせていただければ、やはり、一般クラシック・ファンにはきつい選曲であったことも否めないかと思うが。
- ●ショスタコーヴィチ
- シュニトケの後だと、ショスタコーヴィチが簡単な音楽に思えるから不思議だ。なんて聴きやすい音楽なんだろう、なんて思ってしまった。
- 1楽章、林光さんのプログラムノートには「屈託のないギャロップ(あるいはポルカ)」と書かれている第一主題が、なんともソ連的なポルカであったので苦笑しそうにさえなってしまった。
- 演奏後の荒井さんのお話によると「モルゴーアにとって結成に関わる思い出深い曲」とのことなのだが、正直言って2楽章までは「なんだかつまらない曲だ」と思っていた。しかし3楽章〜5楽章は良かったな。
- 3楽章はかっこいいAllegro、4楽章は哀しくも美しいAdagio、そして5楽章は、哀しく美しくかっこいい!そんな音楽だった。
- なんだか曲の感想になってしまってモルゴーアの感想ではなくなってしまったが、元々私はショスタコーヴィチを聴かないタイプだったものだから・・・。この曲のことはどなたか投稿して下さると有難いなぁ。
- Vaの小野さん・Vcの藤森さんの大活躍が楽しめた、という感想。
- ●稀代のアレンジャー荒井英治
- アンコール。混声合唱のための「10の詩」より”処刑された闘士の為に”、歌曲集「風刺(過去の情景)」より”クロイツェル・ソナタ”、の2曲がショスタコーヴィチ。
- 荒井さんはVnの名手であるとともに、真に稀代の名アレンジャー! と声を大にして言いたい!!!!!
- これらが元来、弦楽四重奏のためのものでないとは信じ難いほどである。
- ●満腹至極
- 最後はシュニトケの映画音楽。
- 「これはモルゴーアとっておきの曲です。」と小野さんが言っていたが素晴しく面白い曲。またも荒井さんのアレンジが効いている!
- なんと見たこともないような笛を咥えて吹きながら弾いていた・・
- 満腹満腹。いつでもモルゴーアのライヴは満漢全席だ!
<了>
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